<コラム44> 2023.03

 


事情に応じて変化してきたエンカウンター・グループの形態

野島 一彦


 

 私は、1970年から50年以上にわたりエンカウンター・グループに参加者、ファシリテーター、オーガナイザー、事務局として関わってきた。私はエンカウンター・グループの目的は、①自己理解、②他者理解、③自己と他者との深くて親密な関係の形成(体験)と考えている。グループで起こることは、①自己開示、②フィードバック、③触発であると思っている。このような意味でのエンカウンター・グループは、現在、大きく3つの形態がある。

 (1)非構成的グループ(unstructured group,low structured group )
  これは初期に盛んに実施されていたベーシック・エンカウンター・グループのことである。ファシリテーターと参加者が今、ここでやりたいこと、やれることを自発的にしていく形で進む。(即興曲を演奏していくイメージ/フリー・ツアー、上級者向け)。
 *文献:カール・ロジャーズ著/畠瀬稔・畠瀬直子訳,『エンカウンター・グループ』,創元社,1982。野島一彦,『エンカウンター・グループのファシリテーション』,ナカニシヤ出版,2000。
*https://encounter-group.jimdo.com


(2)構成的グループ(structured group,  high structured group )
 授業など強制参加のメンバーによるエンカウンター・グループでは、自発性が乏しく、プロセスがなかなか展開しないため、1970年代後半から構造化を高めたグループが村山正治を中心とする九州と国分康孝を中心とする関東でそれぞれに実践されるようになった。
 構成的エンカウンター・グループ/構成的グループ・エンカウンターと呼ばれる。ファシリテーターが指示するエクササイズ、ゲームを参加者が体験する。(楽譜に合わせて演奏をするようなイメージ/パック・ツアー、初心者向け)。
 *文献:国分康孝 ,『エンカウンター』,誠信書房,1981。国分康孝監修,『教師と生徒の人間づくり 第1集 ~ 第4集』,瀝々社。国分康孝監修,ビデオ「構成的グループ・エンカウンター実践技法 全8巻」,図書文化。
*http://www.toshobunka.jp/sge/


(3)半構成的グループ(semi-structured group)
 某看護学校でそれまで実施されていた非構成的グループは最近の看護学生には苦しいということから、2000年代中盤から非構成的グループと構成的グループの両方の特徴を生かした半構成的グループが実践されるようになった。
 森園・野島(2006)が提唱。予めテーマと発言時間を設定。(2泊3日の看護学生のグループの例:EG参加への期待と不安、私の進路を巡る過去・現在・未来、友人・仲間・異性、野外EG,私のキーワード、家族,言葉の花束)
 *文献:森園絵里奈・野島一彦,「半構成方式」による研修型エンカウンター・グループの試み,心理臨床学研究,24(3),257-268,2006. 

 非構成的グループからスタートしたエンカウンター・グループは、その時々の事情に合わせて新たな形態が生まれてきた。私自身は非構成的グループが好きであり、もっともエンカウンター・グループらしいと思っているが、主催団体、参加者、日程等の状況に応じて、この3つの形態を使い分けることも必要だと考えている。また、最近では1日のプログラムで3つの形態を1セッションずつ組み込むことも行っている。