<コラム32> 2020.3

 

人間関係研究会50周年に思う

 

野島一彦

 人間関係研究会は、1970年に畠瀬稔先生、畠瀬直子先生、村山正治先生達が中心となり発足しているので、2020年は50周年となる。半世紀を経過したことになる。1970年と言えば、私が大学院に入り、エンカウンター・グループの実践と研究を始めた年でもある。そういう意味で、50周年は会の歴史と私個人の歴史と二重の記念すべき年ということになる。

 

 この50年の間に、人間関係研究会は、毎年、多様なエンカウンター・グループのプログラムを提供し続けてきた。またスタッフは意欲的にその研究も着々と続けてきた。発祥の地である米国では、エンカウンター・グループの実践と研究が脈々と続けられるというような状況ではないのに、日本では脈々と続けられてきたのである。

 

 人間関係研究会のワークショッププログラムでは、人間関係研究会は次のように紹介されている。「人間関係研究会は、エンカウンター・グループを通した、安全な雰囲気の中で成長し会う人間関係の研究と実践を目的として、1970年春に発足しました。カール・R.ロジャーズのパーソンセンタード・アプローチの精神を大切にしながら、毎年各地で、エンカウンター・グループを中心とした多様なワークショップやセミナーを開催しています。これらの活動を通して、教育・医療・福祉・産業・家庭・地域に、より真実で建設的な人間関係を育てて行くことを課題にしています。」

 

 50年間も会が継続できたのは、この紹介にある2つのキーワード─「エンカウンター・グループ」、「パーソンセンタード・アプローチの精神」─をスタッフが大事にしてきたことによると私は思っている。この2つは人間関係のグランド・キーワードであると言っても過言ではなかろう。

 

 ふりかえれば人間関係研究会はこれまで、次のような記念出版を行ってきている。

 

*20周年=村山正治・見藤隆子・野島一彦・渡辺忠(編)「エンカウンター・グループから学ぶ─新しい人間関係の探求」九州大学出版会 1991年

*30周年=伊藤義美・増田實・野島一彦(編)「パーソンセンタード・アプローチ─21世紀の人間関係を拓く」ナカニシヤ出版 1999年 

*40周年=伊藤義美・高松里・村久保孝(編)「パーソンセンタード・アプローチの挑戦─現代を生きるエンカウンターの実際」創元社 2011年 

 

 そして50周年に当たっては、次のような記念出版が予定されている。

 

 人間関係研究会(編)「エンカウンター・グループの新展開─自己理解を深め他者とつながるパーソンセンタード・アプローチ」木立の文庫 2020年

 

 人間関係研究会は50周年を大きな通過点として、今後さらに新しい展開をしていってほしいと切に願っている。