<コラム36> 2020.8

 

人との出会い・自分との出会い

 

野田 諭

私にとってエンカウンターグループとの出会いは、ファミリーグループからである。勉強会に参加していた際に、畠瀬稔先生にボランティアスタッフとしてファミリーグループに誘われたことがきっかけであった。ファミリーグループでは、複数の家族が集まり、3泊4日、大自然の中、子ども、大人共に自分たちが今やりたいことを皆で話し合いながら選択・決定していく。川遊び、山登り、カードゲームや、皆で話したいことを語り合う場などがよくみられる光景である。ファミリーグループという、全体がゆるやかな一つの家族になれるような場に参加しながら、一人ひとりの想いを聴くこと、自分の想いを聴いてもらうこと、つまり、一人一人を大切にするということを身をもって体験しているように思う。

 

その後、ファミリーグループで出会ったスタッフが世話人をしているエンカウンターグループにも参加した。それは、ゆっくり自分や他者と向き合い、考え、感じる時間がある体験であった。感情はもちろん表現するが、その背景には何があるのか、自分に沸き起こった感情の理由等をじっくり考えたことを覚えている。そして自分の想いや感じていることを受け入れられ、支持される体験は、内面にある想いを共有できる仲間ができた感覚になった。その経験から、自分自身が感じていることを素直に表現してよいというメッセージを、自分で自分に送れることが増えたと感じている。

 

その後、関連の学会や、グループのファシリテーター研修にも参加するようになり、そこでも様々な人との出会いがあった。その中で率直にお互いの想いを聴き合える人との出会いや、気づかなかった自分の一部分との出会い、そしてお互いに対等な対話を通した人間関係の広がりを実感している。

 

これらのことは、忙しさで余裕がなくなっている日常場面では得ることが容易ではない体験のように思われる。守られた場と、精神的余裕も必要なように思われ、その一つの場面設定を行っているのが、エンカウンターグループの場ではないだろうか。本当の自分や、本当の他者と出会える日常から少し離れた場が、現代を生きる人間にとって必要なものではないかと思う。

 

私がエンカウンターグループに惹かれたのは、人生や人間関係の中で「満たされないもの(自己不一致)」があったからだと思う。「満たされないもの」をしっかりと感じることは、自分の深い内面を知り、自分らしく生きるために必要なプロセスだと思っている。そしてその「満たされないもの」の正体に気づき、適切な形で表現し、それが受け入れられた瞬間の喜びは格別になると感じている。一人ひとりが自分の「満たされないもの」に気づき、受け入れ、自分らしい人生の方向に一歩踏み出すためのお手伝いや場作りを、これからも積み重ねていき、地域社会に還元していきたいと考えている。